大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和54年(少)8251号 決定

少年 R・R(昭四二・一二・一九生)

主文

強制措置許可申請(虞犯保護)事件(昭和五四年((少)第八二五二号)を大阪市中央児童相談所長に送致する。

少年に対し強制的措置をとることを許可しない。

触法(窃盗)保護事件(昭和五四年((少)第八二五一号)について少年を保護処分に付さない。

理由

一  強制措置許可申請(虞犯保護)事件について

(1)  本件送致事由の要旨

少年は、昭和五四年八月七日単車窃盗により、大阪府○○警察署より大阪市中央児童相談所長に対し身柄付通告がなされ、同日同相談所において一時保護がなされたが、一時保護中の男子(中学一年生)と同日夜間無断外出し、翌八月八日○○区内のゲームコーナーで遊戯中を発見され、同相談所にて再保護したところ、八月一九日深夜再び一時保護中の男児二名と共に無断外出し、○○○○を徘徊中に同相談所児童福祉司に発見され、さらに一時保護されたが、その後八月二三日早朝三たび一時保護中の教護性のある男子と共に無断外出したものであるが、三回の無断外出中、自宅に立寄つては金を持ち出したり、友人がスリ窃つた現金をもらつたり、自ら電話機荒し等を行つており、このまま放置すれば、本人の徳性を害し、将来非行を繰り返す虞れが充分考えられ、又開放施設では身柄の確保及び指導が期し難く、児童福祉法二七条の二(少年法六条三項)により少年に対し、国立武蔵野学院において、六か月間の強制的措置をとることの許可を求める。

(2)  当裁判所の判断

本件記録、少年調査記録及び審判の結果によれば、少年は、昭和五四年八月七日大阪市中央児童相談所において一時保護されたのち、上記のとおり同日、同月一九日、同月二三日の三度にわたり無断外出をくり返していることが認められる。

さらに前掲各資料によれば、少年は現在小学校六年生であるが、少年の母親は昭和五三年八月に夫(少年の父)と少年、少年の兄R・Nを遺して家出をなし、少年の父はハイヤー運転手として午後二時から翌日午前四時まで勤務しており、夜間は少年と兄は全く放任状態に置かれ、かかる状況下で、少年は、本年四、五月ころよりゲームに熱中したり、盛り場を徘徊したり、窃盗等の触法行為がみられるようになつたことが認められ、少年の非行性は現段階では必ずしも深化定着したものとまではいえないと考えられる。

少年にとつて、今後の監護の在り方が重要な問題ではあるが、これまでに教護院に収容されたなどの経歴もなく、満一一歳という現段階で、今直ちに少年を距離的にも遠隔地に在る国立武蔵野学院に収容して強制的措置を少年に対してとることは、相当でないものと判断する。

さらに、前記強制措置許可申請の事由を虞犯事由として保護処分に付することも考えられなくはないが、少年の父は少年を当分の間適当な施設に収容してもらいたい意向を示し、少年の年令が前記のとおり満一一歳で現在小学校六年生という若年令であることその他諸般の事情を考慮すると、ここで保護処分に付するよりは、今後の監護のあり方等については児童福祉法上の適切な措置、指導に委ねるのが望ましいと思料する。

二  触法(窃盗)保護事件(昭和五四年((少)第八二五一号)について

(1)  本件送致事実の内容は、「少年は満一四歳に満たないものであるが、触法少年A、同R・Nと共謀のうえ、昭和五四年八月六日午後一一時三〇分ころ、大阪市○○区○○×丁目××番地先自転車置場において、K所有にかかる原動機付自転車一台(時価約六〇、〇〇〇円相当)を窃取したもので、もつて刑罰法令に触れる行為をしたものである。」というものである。

(2)  そこで按ずるに、当審判廷において、少年は、本件原動機付自転車の窃盗は少年の兄R・Nが単独でなしたもので、少年は兄がこれを窃取してしばらく時間の経過した後、公園に行つて乗り回すために兄及びAと前記原動付自転車に同乗していたところを警察官に発見され、窃盗の共犯としてつかまつた旨供述しており、この供述と本件記録中の証拠に別段齟齬する点は見当らず、本件記録中には少年、少年の兄R・N、Aの供述調書等は一切存在せず、少年が本件原動機付自転車の窃取に関与したとするには合理的疑いを残すと判断されるので、本件については非行なしと判断する。

三  結論

以上の次第であるから、強制措置許可申請(虞犯保護)事件につき、少年法一八条一項、少年審判規則二三条を適用して、この事件を大阪市中央児童相談所長に送致し、強制措置許可申請については、これを許可しないこととし、触法(窃盗)保護事件については少年法二三条二項により少年を保護処分に付さないこととし、よむて主文のとおり決定する。

(裁判官 谷敏行)

〔参考一〕 特別送致書〈省略〉

〔参考二〕 上申書

大市児措第二七〇号

昭和五四年九月五日

大阪市中央児童相談所長○○○○

大阪家庭裁判所長殿

昭和五四年八月二四日付大市児措二四二号で貴所へ送致した特別送致書は、児童福祉法二七条二項(少年法六条一項三号)に基づく六か月の強制的措置を求めるものであると同時に、児童福祉法二七条四号(少年法第六条一項一号)によるぐ犯送致を兼ねるものですので、お取り計らい方よろしくお願い致します。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例